Sympathy For The Angel
最初は軽く唇に触れるだけのそれは、やがて舌を絡めた濃厚なものに変わっていく。


「……お前と最後にヤったの、いつだったか覚えてるか?」

最後に……?

「……覚えてない」

「そっか……」


自嘲じみた笑いを浮かべた樹は、私をベッドに押し倒した。


「……やっぱ、もう止める」

「止めるって……。何を?」

「お前以外のオンナはもう抱かない」


私がそれに答える暇も与えず、身体中に刻み込まれる所有の証し。


樹がもたらす快楽に飲み込まれて、私は何度となくその波に溺れた。



裸のままベッドに二人で寝転がって息を整えていると、唐突に樹が起き上がって私に着替えるよう指示した。



えー?今からどっか出掛けるの?もう真夜中近いんだけど。

「んーだよ、その嫌そうな顔は」

「だって外寒い」


不敵に笑うその顔には、さっきまでの不安定な様子は見られない。


「いいから早く支度しろよ」

「分かったよ」


ぶちぶちと不満をたれながら、急いで着替えた。


「つーかさ、どこ行くの?」


私の手を引いて階段を降りる樹に聞いてみる。


「俺らの店」

返答は至って簡潔なものだった。

拍子抜けした私は「あ…そ」としか返せない。

「店に着いたら、今までの事をちゃんと説明してやんよ」


何その上から目線。腹立つんですけど。



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