Sympathy For The Angel
赤面した顔を隠しながら店内に入って観察すると、内装は普通のホストクラブのように装飾されていた。



「よくこんな建物を借りられたね?」

「スカイ・グループっつー、ホストクラブを何店舗も展開してる代表に直談判して店を開いた。つっても、半年間の契約だからもうじき閉店するけどな」

「え!?そうだったの……?」


だからそんな大事なこと、何でもっと早く言わないんだよ!!

お陰でさんざん私達は振り回されたんじゃないか!


「椿。お前先に行ってろ」


樹はそう言うと店の入り口にいた男の子に指示して、私の席を作らせた。


席に座るとタバコを銜えてその男の子にオーダーする。


「ブランデー・バック。作ってくれる?」

「あ、えと……ブランデー・バック……ですか…?」

私が銜えたタバコに火をつけながら、そのコはきょろきょろ辺りを見回している。

短髪を金色に染めた、わりと可愛い顔立ちのコだった。



こういう事は不慣れなのか、あたふたするその様子が可笑しくて、つい大笑いしてしまう。


「お前ブランデー入れんのかよ?」


背後から、呆れたような樹の声が聞こえた。

さっきまではまるっきりの私服だったのに、今は色気が漂う胸元が開いたスーツに着替えている。


「て言うか、ブランデー・バックとか高校生が呑まねーだろフツー?お前は飲み屋に通い慣れたオッサンか?」

「フツーのオンナノコが飲むような甘ったるいの、大嫌いなんだよね、私」

「ブランデーなんかボトルで入れなくてもいいだろ。おい、やっすいウィスキーをジンジャーエールで割って持ってこい」

「安い酒飲ませんの?うーわ、ぼったくりだー」


私達のやり取りを見ていたその男の子が慌てて店の奥に消えるのを待ってから、徐に樹に聞いてみた。


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