Sympathy For The Angel
「この店は、いつ閉店するの?」

「来月。本来なら今月中に閉めるはずだったんだけどな」

「なんで延ばされたのさ?売上げが悪かった?」


悪戯に樹の顔を見ると、心外だとばかりに頭を小突かれた。

「逆だ馬鹿。売上げが良すぎて、店を継続してくれって頼まれてたんだよ」

「へー。儲かるんだ、暴走族のホストクラブ」

「珍しいからな」

「……なんでホストクラブなんか始めたのさ?」


常々疑問に思っていたことを、ストレートに樹にぶつけてみた。



「紅蓮にいる奴等は、多かれ少なかれ家庭内に曰があるのが殆どだ。だから、あいつらが自立できるぐらいの金を用意してやる必要があった。それだけだ」

ヒロが幹部会議で言っていた、樹の過去。


親に捨てられ、連れて来られた施設では虐待されていた樹の哀しい心の傷。


確かに、頼る大人がいない彼等には、そうして生き抜くより方法はないのかも知れない。

それに文句を言う筋合いは、少なくとも私には無いだろう。




< 48 / 150 >

この作品をシェア

pagetop