Sympathy For The Angel
「俺は15です。俺と美優紀は年子なんで……」


じゃあ、ハヤトは中3なんだ。

「美優紀ってさ、どこか体の調子が悪いの?すごい顔色悪いよね?」



私が美優紀を気にかけたのはその点だった。


私のその言葉を聞いたハヤトは下を向いて唇を噛み締めた後、重々しく口を開いた。


「……美優紀は、肺動脈狭窄症なんスよ……」


肺動脈狭窄症。確か、心臓病の一つじゃなかったっけ?


「その肺動脈なんとかってのはどんな病気なんだよ?」

樹も気になったのか、ハヤトに向かって先を話すよう急(せ)いた。


「自分もよくは分からないんスけど、肺動脈狭窄症は、心臓の右心室と肺動脈の間にある、弁っつーのが生まれつき狭い病気らしいんです。美優紀は症状が少し重いらしくて、手術を奨められたんですけど……」

「けど?」

「……俺ら施設育ちだし、まだ中学生だからそんな大金なんて持ってなくて……。美優紀には手術を受けさせる事が、出来なかったんですよ……」

「心臓病なら、早目に治療してやらないとやべぇんじゃねーのか?」


樹がセブンスターに火をつけてから、ハヤトをじっと見つめた。


「俺が紅蓮に入ったのはそのためなんです。友達に『紅蓮がホストやってる』って聞いて……。手術代や入院代なんてまとまった金を稼ぐの、普通のバイトなんてやってたら何年もかかっちまうから」

「ここだったら、未成年のお前でも稼げるから……か?」

「……はい。今、美優紀は激しい運動が出来ないんです。少し動いただけでもすごく苦しがって…」

膝の上に置いた手を、ハヤトは真っ白になるぐらいきつく握り締めている。



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