Sympathy For The Angel
―――私の予測に過ぎないが、もしかしたら、あの医大OBの八神とその心臓外科医は、血縁関係なんじゃないのか?


だとすれば……。


「うちの父親はさ、医大附属の医者やってんだよね。その繋がりで美優紀を医大に戻せないかどうか、ちょっと口利きしてみるよ」


ハヤトにそれだけを言った後、私は樹に目配せをした。


「……手術と入院の費用は、一体いくらぐらいかかるんだよ?」

樹は二本目のタバコを銜えてジッポーを取り出した。



「手術費用が25万から30万で、入院の費用は一日1500円ぐらいです。入院は大体10日から2週間ぐらいだって聞きました」

「病院の費用は俺が出してやるよ」


さすがに樹のその申し出には私も驚いた。


「いや!!樹さんにそんな事は頼めないッスよ!!ありがたいんですけど、金は大丈夫ですから!」

首と手を勢いよく横に振りながら、ハヤトは樹の援助を断った。


「お前が貯めた金は、高校受験の時に使えよ。妹の分も抱えてんだろ?」

「……ハヤト。樹の気持ちだよ」


私がハヤトを見て言うと、ハヤトは真っ赤な顔に涙を堪えて下を向いた。

やがて呼吸を整えて立ち上がると、樹に向かって深々と頭を下げた。


「……っ。ありがとうございます!」

店の誰もが振り向いてハヤトを見ても、ハヤトは一心に頭を下げ続けた。


「後で振り込んでやるから、心配すんな。そん替わり、お前にも紅蓮ではきっちり働いて貰うから。もういい、あっちに行ってろ」


ハヤトをさげさせると、樹が私の側に密着してきた。それはもう1ミリの隙もないぐらいに。


「アンタさ、ここに来るオンナにはいつもこうやってベッタリしてんの?」


それ、想像したらすごいムカつくんですが何か?


「やらねぇし。久しぶりなんだから充電させろ。………で?さっきお前、何を言いかけてた?」


あれ?さっきって何だっけ?



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