Sympathy For The Angel
「ハヤトが病院の医者の名前を出した時、俺に何か言いたかったんだろ?」

「あ?ああ、うん」

「何で忘れてんだよ。で、何?」


そうだ、八神の事、樹には話さなければならない事が色々あるんだった。


「うちの父親の後ろ楯に八神っていう医大のOBがいるんだけど、その孫が『狂宴』のトップらしいんだよね。この前のパーティで私に絡んで来た奴」

「……さっきのハヤトの話からすると、心臓外科医の八神って奴とは親類かも知れない……つー訳か?」

「かもね。実は、美優紀をうちに置く替わりに、その『狂宴』の八神諒に1日付き合えって父親に言われてて。今度、土曜日に会う羽目になった。父親はどうしても八神との繋がりが欲しいらしくてね」

「断れよ」

わお速答。

「つーワケにもいかないじゃん?美優紀をうちに置く交換条件で八神諒に会うんだし。それに、心臓外科医がその八神と親類なら、美優紀を医大に戻せるかも知れないでしょ?」

「………なんかすげぇムカつく。そいつ絶対お前狙いだろ」


確かにそうだろうけど、八神諒に近づくのは美優紀のためだから仕方ないじゃないか。


「……今度はさ、私を信じてくれる?樹」

樹の手を取り、優しくその甲を撫でた。


「……絶対浮気すんな」

「しませんよーだ」


自分は今まで枕営業までしてたくせに、なんで私は束縛されなきゃいけないんだか。

「毎日一時間置きにメールか電話」

「…ちょっと無理かな」


だけど樹が私の事を、そこまで思ってくれてるなんて知らなかった。


たまには束縛されるのも、悪くはないな。



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