Sympathy For The Angel
私としても、ヒロには聞きたい事があったから好都合だ。



「ドリンクバーでいいよな?」


ヒロがホール係に注文すると、耐えようのない沈黙が訪れた。


「今、紅蓮の本部がやってること、どうしても私達だけにでも教えてはくんないの?」

「……樹にはどの支部の奴等にも言うなって口止めされてる」

私の問いに歯切れ悪く口を濁すヒロを睨みながら、逃げ道を塞いでやりたくなった。


「でも、樹が紅蓮のチーム員を使ってホストクラブを経営してるのは、事実なんだよね?」


私が溜め息とともにその言葉を吐き出すと、ヒロは観念したように天井を見上げた。


「……確かに、樹は紅蓮を使ってホストクラブをやってる」


「アンタさ、なんで樹を止めないの!?」


エリカがヒロの胸ぐらを掴んで立ち上がらせた。

「っせぇな。俺も止めたさ。なのに樹は聞っかねぇし」

「アンタ達がそんなんだから、今の紅蓮がナメられてこんな状態になってんじゃんよ!?さっきだってコンビニの前にいたの、あれ『beast』の奴等じゃん!?なんでうちらのホームに敵対チームの奴等が来てニヤついてんの!?アンタ達、それ見ても腹立たないの!?」


ヒロの胸ぐらを掴んだまま、エリカは一気にそう言った。


そう、樹が半年ほど前から、紅蓮の下のメンバーを使ってホストクラブを経営しているらしいと噂に聞いた時は、流石に嘘だろうと思った。

樹が何より紅蓮を思っている事は、私も理解しているつもりだった。

だからその樹が、金利目的でホストクラブを始めたとは未だに思えないのだ。



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