Sympathy For The Angel
「いっただきまうす!」
「なんだそりゃ」
馬鹿にしたようなエリカの突っ込みも耳に入れず、私は目の前のバイキング料理に目を輝かせた。
ここは和食のバイキングレストランだから、ご飯ものが揃ってるところや、薄い味付けなのが体には嬉しい。
「ふおぉ!まともなご飯だよぅ!」
「アンタまともに食ってないの?」
昨日は…朝はシリアルだし昼はパン。夕方にケーキ類を食べただけだったから……。
「多分2日振りぐらい?」
「どんな食生活だよ」
だって冷蔵庫に何も入ってないんだもん仕方ないじゃん。
「五目ご飯旨し唐揚げ旨し味噌汁旨し」「黙って食え」
すみません。
「でも、美優紀が来るんだから、ちゃんと食べる物は用意しないとダメだよ?栄養が偏るのもいけないんでしょ?」
「なんかねー、鉄分…ヘム鉄っていうのを摂ると良いらしいから、レバーでも買っていこうかと思ってる」
「栄養学でも勉強したら?それより、ハヤトの連絡先聞いた?」
……忘れてた。
「聞いてないんでしょ?そんな事だろうと思って今朝ヒロに聞いといたよ」
これ、と言ってエリカから一枚の紙きれを渡された。そこには携帯の番号が羅列してある。
「ごめん。ありがと」
「紅蓮を抜けても忙しいよね、椿は」
「なんかバタバタしてるんだよね。美優紀にルカに八神諒。色々と重なってるから」
どんまーい、とエリカが他人事のように笑った。
実際エリカにとっては他人事なんだけどさ。
「そう言えば、初出勤はどうだった?」
「ああ、バイト?そうだねぇ……。豚肉が食べれなくなる、かも」
「なんで?」
エリカが言うには、バイト先の店の調理場で豚の頭を丸ごと捌いているのだそうだ。
その作業があまりにもグロテスクなので、悪夢に魘(うな)されたとエリカがぼやいた。
「はーお腹いっぱい。幸せー……」
満腹になると、うっとりした顔で食後のブラックコーヒーを飲んだ。
「喫煙コーナーってどこだ……」
「馬鹿かアンタは!?うちら今制服!!」
後先考えてませんでしたすみません。