Sympathy For The Angel
「先に食べてていいよ」と、席に座っていた皆に一言かけてから、玄関に行ってそのドアを開けた。




「お前……。毎日連絡しろっつっただろ?」


開口一番そう言って、不機嫌さを隠しもしない樹がぶっきらぼうに立っている。


「ごめん!色々と忙しくてさ。今日は美優紀が家に来る日だったし。樹は、今日は休み?」

「休みじゃねぇけど。遅番だからその前にお前の顔見に来た」


瞬間、自分の頬が赤くなったと思う。

恥ずかしいけど嬉しいよ、樹。



樹はぐいっと私の後頭部に手を回して強引に唇を塞いだ。


キスは深く濃厚なものに変わり、息をつくのすら惜しむように樹は私の口内を蹂躙した。



玄関なんて目立つ所でやんないでよ。嬉しいんだけどさ。




「今さ、皆でご飯食べるところなんだけど、樹も食べていかない?」


樹は暫し考え込んだ後頷いた。


「……お前の作った料理、俺あんまり食ったことねぇよな?」

「あれ?そうだっけ?」


ダイニングに樹を連れて戻ると、樹の姿を認めたハヤトが直立不動で立ち上がった。

「すんません樹さん!お先に頂いてました!」

その姿は衛兵のようで笑えてしまう。


「……気にしなくていい。まず座れ」

「あらぁ、久しぶりだよねぇ樹?ヒロが随分とお世話になっているようで」

エリカ様の嫌味攻撃が炸裂した。


「№2なんだから仕様がねぇだろ」

だが樹には効果が無いようだ。



尚も嫌味を言うエリカを無視して素通りし、樹はキッチンにいた私の横にくっついてきた。


「お前さ、金曜日の夜は暇か?」

金曜日の夜?

「何も予定は無いけど。蘭は週末に単車で走るのも自粛してますので、ええ」


紅蓮の保護下を離れたせいで、蘭のメンバーには今までやっていたような目立つ暴走行為や喧嘩などを極力控えさせている。




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