【続】朝の旋律、CHOCOLATE
婿様が、何か言おうとしたのを、哲は目で制したように、見えた。
優しそうな、婿様の目は。
今は私を心配するように、揺れていて。
私は、にこりと、笑ってみた。
大丈夫。
変な空気にして、ごめんなさい。
仕事、しましょう?
もう今日は、夕方まであの人来ないし。
来ても、もう話すこと、ない。
普段通り、図面と品物と納期を、話すだけ。
奇妙に緊張してしまった空気は、私が機嫌良さげに機械を回し始めた事に、諦めたように少し和らいだけれど。
やっぱりどこか、おかしかった。
「蜜ちゃん、部屋にご飯あるの?」
マモちゃんが、優しく優しく、声を掛けてきた。
「うん、ちょうど炊けたはず」
朝、セットした炊飯器。
2人分のご飯を炊く事が、日常になった。
お米はいつも、哲が買ってくれるようになっていて。
確実に、これからも穏やかに過ごせるような時を刻んできた、と思うのに。
…思う、のに。