【続】朝の旋律、CHOCOLATE
「血ぃ吐いたんだって?」
にやにや笑うその顔は、嫌いじゃない。
無精髭っぽい髭は、ちゃんと手入れしているようで、伸び放題、といった感じではなかった。
や、全体的に小汚いんだけどね?
「吐いてないよ、ちょっと……血飛沫?」
「うわ、やだやだ。もう元気になった?」
「うん、大丈夫」
手渡された、重たい紙袋の中身を覗けば、大量の…
「…レモン?」
「夏にさあ、蜜、レモンでマーマレード作ったでショ?」
「…う、うん」
作った。
砂糖漬けと、マーマレード。
「あれ、食いたい」
「……………作れ…と?」
「うん、作れ」
…やだもう、このひと我が儘。
どんだけ食べる気で、こんなにたくさん買ってきたの…。
私は袋の中の、30個はありそうなレモンと、小汚いけどセクシーな口許で笑っている真ちゃんとを見比べてから。
来週までになんとかする、と請け負った。