【続】朝の旋律、CHOCOLATE


ラストの音を、楽器の先端、ベルの高さを上げて止めた。

ぴったりと、ひとつに纏まったイントラーダは、視覚的にも綺麗に見えた筈だ。


私的には、とても満足。

楽しくて嬉しくて、気持ち良くて、たまらなかった。



休憩で明るくなった観客席は、思ったよりも満席で。

見渡せば、一番後ろのポールに寄りかかった赤い髪の隣に、熊のような髭面が、いつの間にか、いるのが見えた。




「婿様!来てくれたの?」


「みちゅ!カッコ良かったなぁ!誰よりも一番、いっっちばん可愛かった!」


慌ててロビーに出た私が、婿様に飛びつくように声をかければ婿様は。

いきなりそんな、こっぱずかしいことを、言った。


私はあんたの愛娘ですか、っての。



「なあ哲!綺麗だったなぁ!」

「……………………」


「……なんだ哲!すごく可愛かったじゃないか!!照れずに白状しろ!!」


「……………………」



哲は。

ふてくされたように、婿様と私から目を逸らせて。



ええ、まあ、と。


……物凄く照れ臭そうな、貴重な表情を、覗かせた。




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