【続】朝の旋律、CHOCOLATE


「素晴らしく響きましたね、蜜サン!」


タキシードの団長は、全ての演奏を終えて、余韻に浸る間もなく、片付けに追われていた私の肩を掴んで、嬉しそうに、笑う。


や、うん。
ありがとう。

でもほら、完全撤去までに…あと30分しかないから……早く楽器、トラックに積まないと。



「団長ぉ!暇ならティンパニー包んでください!」


ほら、怒られた。


「ああ!桜井サン!アナタのバスクラリネットも素晴らしかった!」



団長は、いつもこう。

割と大柄で、少し色素の薄い団長は、大きな身振りで。

どことなくカタカナで喋っているような気が、する。


撤退の時間に追われて、ちょっと慌てている私たちを、褒めて回っては、少しずつ手伝っていく。

イライラしそうな、ハイテンションなのに、不思議と、和む。



団長、早く片付けて、打ち上げしましょう。

団長の好きな、手羽先、きっとありますよ。



だから。


早く、楽器運んでくださいっての。



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