【続】朝の旋律、CHOCOLATE
「…とりあえず、より自体は戻したみたいだけどな」
でも多分、そろそろ無理だと…思う。
あいつ、女の愚痴、滅多に言わないけど…今回は海外逃亡を企ててたからなぁ…。
そんな事を言いながら、哲は。
来るもの全然拒まないんだから、ある程度、自業自得だと思うけどな、と。
私の唇から3mmの所で、苦笑した。
ぞくり、ぞくり、と。
鳥肌が立って。
ただ、哲の唇と手のひらが、素肌を撫でるだけのことに。
私の息は、少しずつ上がる。
かつて、この手が触れた、女の子の存在は。
ヤキモチ、という程の強さもなく、通り過ぎて。
私に触れた男の存在が、大した意味もないものに変わっているのと同じように、哲も。
そんな存在、私にたどり着くまでの、途中経過に過ぎないに違いなくて。
少しずつ、丁寧に、様子を見るように触れていた哲の手は。
私が、哲のシャツのボタンをいくつか外した途端に、性急なものに、変わった。