【続】朝の旋律、CHOCOLATE
「ちょっ………だ、め」
汚い汚い!
そこ、あいつが噛んだとこ!
駄目だよ哲!
なにしてんの!
視界の全てが、哲の赤い髪に遮られて。
体温が、近い。
「…蜜ばっかり、痛い思い…し過ぎなんだよ」
蜜はどれも…ひとつも悪くないのに。
囁くように、吐き出すように。
哲の声は、私の唇を掠める。
それは決して、その先を促すようなものではなくて。
ただ甘い、もの。
ただ切ない、もの。
狭山久志が私につけた傷を、癒やす、もの。
「…てつ、私、全体、的に、不細工、に、なった」
「こんなの望んでねぇし」
あんまり恥ずかしくて。
この前、哲が呟いた事を言ってみれば。
何のことかとも思わなかったのか、ごくごく真面目に返されて。
まだ、冗談にするには早かったか、と私は。
近すぎる哲の目を、見つめた。