【続】朝の旋律、CHOCOLATE
聞くのも辛い哀願と、盛大な、勘違い。
私の、頬に貼られた大きな絆創膏と唇の傷とに、一瞬怯んだようにも見えた母親は。
「あの子は、あなたを好きなだけなんです!」
と。
いきなり叫んだ。
あなた、話し合おうともしなかったそうじゃないですか!
あの子が思い詰めたのも、すべて、あなたを好きだったからです!
一度でも、あの子と好き合っていたならば、こんなに過剰に騒がなくたって…!
こんなの、あの子が可哀想です!!
結婚するつもりしていた人に裏切られて、正気でいられると思いますか!?
揉み絞るように泣きながら、私の手を取ろうとした、母親は。
激しくはないけれど、きっぱりと遮った哲を、睨み上げた。
「あなたも、人の恋人を寝取るような真似して…恥ずかしくないの!? 」
ああ……その台詞、どこかで聞いた。
何年か前、哲に会う前に。
…聞いた。
どうして“好き”って…
こう…生々しくて、汚いんだろう……。