【続】朝の旋律、CHOCOLATE
私は。
どれだけ大きな声を出されても、不思議なくらい、動じなかった。
ただ、頭の中が。
冷たく沸騰するような、奇妙な感覚。
狭山久志の両親は、これはこれで、息子を愛しているのだろうと思った。
私からしたら、冗談じゃない、と思うけれど。
例え、歪んでいても、自己中心的でも、両親が息子を信じている、という形は。
間違ってはいないように、思えた。
私は、彼らを好きにはなれないし、この二人のしている勘違いを、正さなくてはならないのだけれど。
「……もう、来ないで、くれませんか」
私は、子供を育てた事はないし、産んだことも、宿した事もないけれど。
それでも、わかる。
これが、彼らの生きてきた結果にも似たこと、だという事。
婿様が、子供は育てたようにしか育たないんだよ、って言っていた。
だからみちゅのご両親は、きっと、芯の強い、穏やかなひとなんだろうね、って。
可哀想に、ね。
あいつを育てるために、頑張って仕事もしていたろうに。
誰にも受け入れて貰えないような事をするひとに、育っちゃったんだね。
もう、いいよ。
可哀想だから、帰りなよ。
あとは、警察と弁護士とに、任せましょう?