【続】朝の旋律、CHOCOLATE
蜜も、靴を見ましょう。
これなんか、どう?
素知らぬ顔で、エレンさんは私を呼ぶ。
余所見、という単語に引っ掛かりをおぼえる、私を。
私…。
そんなふうに、見えるんだ…?
「……哲、あれ欲しい」
「どれ?」
「あれ。赤いの。…リボンついたやつ」
哲は。
急に神妙に大人しくなった私を、訝しげに見下ろしてから。
私の指差した赤い、合皮のパンプスのサイズをチェックした。
「あ~…ちょっとデカいな」
哲は、私の事でわからない事なんか、ない。
靴のサイズも。
多分、ちょっと思い悩んじゃった、今の気分も。
「………蜜、は…俺のだよ?」
赤い靴の隣の棚にあった、黒いベルベットのブーツを手に取った哲は。
何を言ったら良いのか悩んだような顔をしてから。
そんなふうに、苦笑した。