【続】朝の旋律、CHOCOLATE


私は、ワインレッドのワンピースにライダースジャケットを羽織って。

傷痕のある哲の指を、握る。

きれいにくっついて、動くようになった指を、握る。



「タクシーで行っちゃう?」

「そうだな、駅から距離あるし」


行き先は、都内のライブハウス。

いつも行く楽器店の人が企画した、ライブイベント。

そこで、哲が歌う。



久しぶりの、哲の歌。

真ちゃんが居なくなっちゃったから。
もしかしたら、二度とライブハウスでは聴けないのかもしれない、と思っていた、歌。


伸びやかで、掠れていて。
濡れるほどに、気持ちのいい、声。

私があっという間に呑み込まれた、哲の、歌。




「ギター、誰が弾くの?」

「ん~、多分、店長」

「レスポール?」

「や、多分SG」



そっかぁ…
ギタリストっていっぱいいるもんね。
あそこの店長、SG使いさんだったんだ。

ちゃんと、哲をカッコ良く魅せてくれる音だといいなぁ。




< 413 / 422 >

この作品をシェア

pagetop