【続】朝の旋律、CHOCOLATE
私は、ワインレッドのワンピースにライダースジャケットを羽織って。
傷痕のある哲の指を、握る。
きれいにくっついて、動くようになった指を、握る。
「タクシーで行っちゃう?」
「そうだな、駅から距離あるし」
行き先は、都内のライブハウス。
いつも行く楽器店の人が企画した、ライブイベント。
そこで、哲が歌う。
久しぶりの、哲の歌。
真ちゃんが居なくなっちゃったから。
もしかしたら、二度とライブハウスでは聴けないのかもしれない、と思っていた、歌。
伸びやかで、掠れていて。
濡れるほどに、気持ちのいい、声。
私があっという間に呑み込まれた、哲の、歌。
「ギター、誰が弾くの?」
「ん~、多分、店長」
「レスポール?」
「や、多分SG」
そっかぁ…
ギタリストっていっぱいいるもんね。
あそこの店長、SG使いさんだったんだ。
ちゃんと、哲をカッコ良く魅せてくれる音だといいなぁ。