【続】朝の旋律、CHOCOLATE
哲はまだ、ギターを弾けない。
指先に力を入れる動きは、まだ出来ない。
指はすっかり、取れちゃう心配が無くなって。
ついこの前、爪が。
伸び出した。
一旦は切り離された指は少し形が変わっただけで。
ちゃんと哲の一部に、戻った。
哲は。
せかせかと昼食を食べ終えて、慌ただしくお茶をひと口飲んで、立ち上がろうとした私を。
引き留めるように、背後から、両腕を回した。
耳元に、赤い髪の触れる感触と、急な哲の体温に。
私はマグカップを取り落とさんばかりに、一気に緊張する。
「……な…なに…?」
哲は後ろから、私の喉とあごのラインをなぞりながら、耳元に唇を寄せた。
「取り敢えず、午後の活力」
「…………」
「このまま歌えば、一石二鳥」
「やっ…」
駄目だよ!
朝たのんだ歌、声がセクシーに揺れるもん!
こんな耳元で歌われたら、私、午後仕事出来ないよ!!