【続】朝の旋律、CHOCOLATE
ごほり、と。
嫌な咳が出る。
胸が、痛い。
この痛みには、覚えがある。
小さい頃、何度も罹っては入院した、肺炎。
さすがに高校にあがる頃には、入院はせずに、自宅療養だった。
……まぁ、罹ってはいた、って事だけど。
そんな感じの、重い鈍い、痛み。
「風邪、か?」
磯部さんは、とかく無口で。
哲よりも、ずっと無口で。
ダンディーかと言うと、絶対に違う、と言い切れる。
やることなすこと、ことごとく、ちょっとずつ抜けていて、時には苛つくけれど。
基本的に、穏やかで、心配性な、人。
「ん、ちょっとだけ」
私は、にこりと。
出来るだけ心配かけないように、笑顔を向けた。
「小さいんだから……あまり…無理は……」
語尾が消えがちな磯部さんは。
私がここで働く為に初めて来た時に、無理だ、と。
こんな小さい子に何ができる、と。
どんな認識でいるのか、小さい小さいと連呼して、やるなら事務だろう、と。
静かに猛反対した、ひと。