【続】朝の旋律、CHOCOLATE
「………哲は…」
あ、まだ話終わってなかったのか…。
「うん?」
「…指、大丈夫…か?」
うん、大丈夫だよ。
この前、伸びてきた爪を切るのを怖がってたけど。
「…そ、か」
ふ、と。
微かに笑顔を見せた磯部さんに、私もほっと、和む。
ずっと、気にしてくれてたんだね。
ありがとう。
私は、旋盤のスイッチを入れて、仕事に取りかかる。
磯部さんも、煙草に火をつけてから、取りかかる。
その煙草の匂いと、金属と、機械油の、匂い。
私は、思考を切り替えて、品物をセットした。
もくもくと。
土曜日は、工場の電話も鳴らないから、とてもはかどる。
ごほり、と。
なるべくしないようにしていた咳は、機械の回る音に混じって、頻繁に、出た。