【続】朝の旋律、CHOCOLATE



「蜜!」


赤い、髪。


狭山工販の裏手で、右手首を掴まれて、車から降りるに降りれず、もがいていた私の耳に。

哲の声。


弾かれたように、振り返れば。

頭にタオルを巻いたままの、仕事中の、哲の、髪。




「なに…っして………」

んだよ!



私の体は引きずり下ろされ、私はその場に投げ捨てられたように転ぶ。



いいい痛ったああああッ!

肘!
肘打った!

哲!
私、肘擦ったよ!!



助手席のドアを開けたまま。

哲は、そこを塞ぐように、左右に手を突いて。

中を凝視した。




「…………遅くまで…連れ歩かれたら……、…困ります」


ものすごく、抑えつけた低い声でそう言うと。

勢い良くドアを閉めて、振り返った。




「……馬鹿蜜」

「………ごめ…」


哲の手は、私を助け起こす為に握った手の熱さに、ぴくりと強張った。



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