【続】朝の旋律、CHOCOLATE
うちの、車。
いつも私が借りる、婿様のGTRじゃなくて、配達用のウィングロード。
うちの社名の入った、大きな車。
「……診察券は?」
「うちにある」
「うちの、どこ?」
「…バルブオイルのとこ」
はああ、と。
私は大きく息をつく。
のどの奥が、熱い。
車高の高い、ウィングロードの助手席によじ登った私と、そんな会話をした哲は。
ドアを閉めてくれてから。
降りてきた狭山久志に、小さく会釈して、自分もさっさと乗り込んだ。
「…哲」
なんで、いるの?
「配達」
素っ気ない。
なんか、怒ってる?
「…帰って、まだ蜜いなかったら、電話しようと思ってた」
あいつ、蜜に触ったろ。
なんで、あと尾けるような奴の前で寝るんだ、って思ったけど。
「そんだけ熱があれば当たり前だな」
確か、外来20時までだったよな。
なんて。
哲はまっすぐ、病院に向かってくれた。