【続】朝の旋律、CHOCOLATE


何だか分からない内に、何だか豪勢な個室に閉じ込められた。

来客用ソファが布張りだ…。
………マジいくらするんだろう、この病室…。

別に…吐血した訳じゃ…ないんだけどなぁ…。



「蜜」

「…はぃ」

「夜、また来るから」

「………いぃ」


別に。

別に、付き添いのいる歳じゃないもん。



「何か持って来るものは?」

「…ない、と思う」


バタバタとした疲れか、熱のせいか。
もしかしたら、点滴のせいかも知れない。

重たい眠気が、思考回路を鈍らせる。


何が必要か、判らない。

いつも私、何がいるんだったっけ?
何がないと、困るんだっけ?




「あぁ…哲、が」

…………いない、のが…




「………だっ…だだ大丈夫、何にも要らない」

………ヤバい、間違えた。
ぼんやりするにも程がある。



相変わらず溶けそうな私の目は、哲の唇のピアス辺りをさまよい、慌ててまぶたを閉じた。



…ちゃんと来るから、なんて。



改めてそんな…囁かないでよ!

私まで恥ずかしさ倍増じゃないか!

…ま…間違えただけだってば!聞かなかった事にしてよ!




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