【続】朝の旋律、CHOCOLATE
ねぇ、哲。
何だか具合悪くて忘れてたけど…。
明日、狭山工販来ても、怒らないでね?
揉めないで、ね?
何にもなかった事にしよ?
私、何にもされてないよ。
ね?
そうしよう?
黙って、仕事しよ?
全然聞こえなかった音楽。
夢の中の、あの怖い音しか聞こえなかったけれど。
入院初日の夜、哲が部屋着を買って来てくれて。
わずかに下がり始めた熱に、ひどくほっとしたような顔をしてくれたから。
聞こえ始めたのかも、知れない。
リズムの取りにくい、知らないギター単体での、音。
指に嵌めた、ビール瓶の口部分を切り取ったもので、弦を撫でるような、独特の、音。
「…ねぇ哲」
「ん~?」
「………そのお粥、食べて?」
「…………………」
「……お願い」
だって…お昼ご飯、食べなかったら、あの男子看護学生、怒ったんだよ…。