【続】朝の旋律、CHOCOLATE
でもな、食わないと、いつまでも帰れないぞ、なんて。
哲は、お母さんみたいな事を言う。
真っ赤な髪で。
耳にも、眉にも唇にもピアス。
一見、とても派手で。
あまり笑顔を浮かべないから、いつもつまらなそうに見えるけれど、結構、楽しんでることが多いみたい。
「ねぇ私、ずっとこの部屋?」
よく見たら、ポットと紙コップ、インスタントのコーヒーとか、紅茶のティーパックまで備え付けてあるんだ。
…ホテルかっての。
「差額は社長の奢り」
「マジ!?」
ちょっと大きな声を出した途端に、咳き込んだ。
哲は、当たり前のように私のベッドに腰掛けて、背をさすってくれてから。
頼むから、食ってくれ、と。
私の目許に、唇を当てた。
……のが、なんだかひんやり、気持ち良くて。
なんだかやたら、緊張して。
スプーンに掬われて、口元にあてがわれた、お湯のような粥をひとさじ、おとなしく口に含んだ。