【続】朝の旋律、CHOCOLATE
ドアがノックされたような、気はする。
ただ、返事を待たずに開いた、だけ。
…あっ、と。
可笑しいくらい慌てた一声と、廊下で、笑いながら叱られる声とが。
「看護師さん?」
「多分。学生さんだと思う」
閉まったドアがなかなか開かない事に、哲も苦笑を隠せない。
……ドア開けたら、あーん、ってしてた、とか。
…………学生め。
……見たな!?
チョー恥ずかしい!
チョー恥ずかしいよ私!!!
哲の、いつものショートブーツが、床を踏む。
手の、肌理の所々に、まだ黒く機械油と鉄粉の汚れが残っていたから。
きっと、お風呂入らないで、来てくれたんだと思う。
じわじわと。
嬉しいような。
申し訳ないような。
私は、他のおかずをちらりと見てから。
そっと、トレイごと押しやった。