桃橙 【完】

――…



安芸は、仕事を終えてから仕事先から貰ったお弁当や果物を持って病院へと来ていた。



「お母さん、それなに…?」


「あんたにあげる」



お母さんから渡されたのは、2つの通帳だった。



「あんたはこれ、何かしらないかもしれないけど。これは通帳っていうの」


「通帳…」


「そ、あんたのアルバイト先は手払いだから、必要なかったけど…早く教えておけばよかったわね」


「お母さん?」



私の問いかけに、お母さんはフッと笑って



「これは姉さんの通帳」



一つの通帳を指差してお母さんは言った。
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