桃橙 【完】
「生きていたみたいで…とても驚きました」
自分の腕の中で、まるで他人事のように話を進める安芸に、総は目を細めた。
「お姉様から逃げるように家を飛び出した先で、母と出会いました」
「………」
「……母が言うんです。私はあなたの本当の母親じゃないって」
「…安芸」
心配そうな視線を寄越す総に、安芸は優しく微笑んだ。
「私の本当の母親は、母のお姉さんだそうです」
「お姉さん?」
「はい。私を産んですぐに亡くなったそうです」
「………」
「それで、唯一の家族であるお母さんが…引き取ったそうですが、育てることができずに…お付き合いをしていたお父様…春河家に預けたそうです」
「そのことを、由連は?」
「…知らないそうです。れっきとした母の娘で、自分の娘だと…そう思っているそうです」
「そうなのか…」
納得がいかないような顔をする総さんの頬を、ゆるゆると撫でた。
自分の腕の中で、まるで他人事のように話を進める安芸に、総は目を細めた。
「お姉様から逃げるように家を飛び出した先で、母と出会いました」
「………」
「……母が言うんです。私はあなたの本当の母親じゃないって」
「…安芸」
心配そうな視線を寄越す総に、安芸は優しく微笑んだ。
「私の本当の母親は、母のお姉さんだそうです」
「お姉さん?」
「はい。私を産んですぐに亡くなったそうです」
「………」
「それで、唯一の家族であるお母さんが…引き取ったそうですが、育てることができずに…お付き合いをしていたお父様…春河家に預けたそうです」
「そのことを、由連は?」
「…知らないそうです。れっきとした母の娘で、自分の娘だと…そう思っているそうです」
「そうなのか…」
納得がいかないような顔をする総さんの頬を、ゆるゆると撫でた。