桃橙 【完】
「お父さんのことは?」


「…お母さんも知らない、と言っていました。死んだ姉の…母しかわからないそうです」


「そうか…」


「そんな時です。陶弥さんに出逢ったのは」


「陶弥に?」


「はい。部屋を借りることができない私を助けてくださいました」


「…この部屋に?」


「はい…。とても、助かったんです」


「そうだったのか…」



そのまま、話し疲れて総さんの胸に預けて眠ろうとすると



「安芸」


「………」


「それだけで帰れない、と言うのか?」


「………」



総さんの言葉に、スッと心が冷たくなる。
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