桃橙 【完】
「安芸、何か隠していることはないか?」


「………」



じっと、総さんの胸を見つめて…


そっと撫でた。



「総さん…」



話し始める私の声は、自分でもわかるほどに震えていた。




「私は、春河家で育ちました。その生活の中でとても…大切に思っていた人が2人います」


「………」


「遙お兄様と…蔵宇都です」


「…兄がいるのか」


「はい。とても優しいお兄様です」


「…もう一人は?」


「小さな頃から私の傍にいて、お世話をしてくれていました」


「………」


「お姉さまに、家に連れ戻された時…」


「………」


「私は…」


「………」


「蔵宇都と、……体を重ねました」


「………」


「………」


「それで?」


「それで…、だから……総さんのところには…」


「帰れない、そう思った?」


「………」


「……勝手に決めてくれるな…」



低い声に、思わず総さんの顔を見上げた。
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