桃橙 【完】
「その蔵宇都とかという男に、お前が進んで…自ら進んで体を開いたとでもいうのか?」


「……ちがう…」


「そうだろう?…なら、いい。…いいんだ」


「でも、私は…」


「俺がいいと言っているんだ。…もう、忘れろ」


「忘れることなんて、できません」



あの日の蔵宇都の顔は、今でもふとした時に蘇る。


そして、ひどく悲しくて胸が痛くなる…。



「なら、忘れてなくてもいい。…そんな理由で俺から離れようとするんじゃない」


「それは…」


「…俺の気持ちを勝手に決めるな」



震える声の総さんにハッと息を呑んだ。
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