桃橙 【完】
「俺は、安芸がいなくなった時…どうにかなってしまうかと思った…っ」


「お前の姿を見つけた時は……死ぬほど、…胸が苦しかった」


「……総、さ…」


「俺の気持ちを…お前が決め付けるな……っ!!」



その瞬間、強く…強く…抱きしめられた。


まるで、総さんの思いが私の体に流れてくるかのようだった。



「その蔵宇都とかいう男に抱かれたとしても…俺の気持ちは揺らがない」


「………」


「たとえ、安芸がどんな姿になっても…俺はお前を見つけて愛していく」


「………っ、」


「馬鹿だと笑ってくれてもいい…俺は……お前がこんなにも愛しくて仕方ないんだ」


「総さん…っ!」



零れる涙を太い親指で拭ってくれる。


総さん…



「何があっても俺から離れるな」


「……総さ…、総さん…っ」


「安芸…」



そのまま、安芸のベッドの上で何度も強く抱きしめあった。


キスもせずに、ただ抱きしめあっているだけで…心が満たされるようだった。
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