桃橙 【完】
最愛
――…
「で…総のマンションに帰るわけだ」
「はい。でも、陶弥さんのお仕事で必要な時は、行きます」
「毎日、来てもいいんだよ?」
「却下だな」
「恩人にそれはないよな…酷い奴だな」
「わかってる。今までマンションから出すのさえ嫌だったんだ。進歩したと褒めて欲しいな」
「…まじかよ。マンションから出さないって…どれだけ人が変わったらそうなるんだ?」
「……放っておいてくれ」
「安芸ちゃん、今からでも遅くはない。俺のところに」
「陶弥さんのところにいても、私はマンションからほとんどでませんから…」
「ま…、確かにね…そうだ」
そう言って陶弥は笑った。
2人が幸せなならそれでいいと、送り出してくれた。
陶弥に送られながら、安芸は総の車に乗り込んだ。