桃橙 【完】
――…
近くの喫茶店で、2人で珈琲を注文する。
「すみません。会社にまでお電話してしまって」
初めて見る安芸の兄―…いや、春河 遙は、色白で瞳が茶色ががっていて…まるでフランス人形みたいな顔をしていた。
綺麗な顔だな、そう思った。
「いえ。それで、私になにか?」
「―単刀直入に聞きます。安芸は今どこに?」
「…私の実家にいます」
「……青柳のご実家に?」
「えぇ、色々事情がありまして」
父さんは、安芸のことを公表していない。
まだまだ、すべきことがあるからだ。
けれど、この男に嘘をついても無意味だと、俺の本能が告げていた。