桃橙 【完】
「安芸!」



俺より先に席を立ち、安芸を抱きしめる。


総の腕の中で安芸は嬉しそうに微笑んだ。



「総さんの靴があったから、いらしているのだと思って」


「安芸は?どこに行っていた?」


「お父さんとお買い物に行っていました」


「そうか」



安芸は、青柳家に来てからよく笑うようになった。


中卒の資格しかない安芸に、青柳社長は、様々な家庭教師をつけて安芸の教養を深めている。


もともと素質があったのだろう、安芸は戸惑うことなく教養を身につけている。


今日着ている服も、とても綺麗だ。



「安芸、その服とても似合ってる」


「総さんがプレゼントしてくれたから、着ていてとても安心するの」



清楚な紺色をしたワンピースは、とても安芸に似合う。



「安芸、みんなでお茶をしようか。…父さんは?」


「お父さんは、お仕事があるって戻られました」


「そっ、じゃあ気兼ねないお茶会をしようか」


「はい」
< 159 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop