桃橙 【完】
「知らなかった、か。もういつ潰れてもおかしくはない状況だ。もともとやっていることが危ない会社だったからね、遅かれ、早かれ…の結果だとは思う」


「それは…」


「君は、春河家という後ろ盾を失くして、どうやって安芸と暮らしていくつもりだ」


「……自分の全てをかけて、安芸を…」


「春河が、君を探してる」


「………」


「最後の勝負、というところだろう。君に婚約者を用意してるようだよ」


「………」


「娘さんの方にも用意をしたとか…。なんとか資金繰り、そして血縁関係で会社を立て直そうとしている」


「………」


「それでも、君は安芸を選ぶと?」


「…もちろんです」



スッと上げた顔には、迷いの無い決意があった。


安芸は不安そうに父さんを見ている。
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