桃橙 【完】
――…
話の途中、総は安芸を連れて一度退室した。
そして、話を終えた頃を見計らって2人で戻ってきた。
春河は、安芸へ視線を向けた。
「…安芸」
「遙お兄様は、ずっと私の大切なお兄様です」
安芸は、胸に手を当てて涙ながらに話した。
「俺もだよ。変わらない……安芸は、俺の…大切な…」
「春河くん」
「はい。青柳社長」
「さっきも話したが、君がよければ私の会社へ招き入れる。…どうするか、よく考えてから返事をしてくれていい」
「…私も、父を許せないのは、一緒です。安芸にあんなことをした父を…いくら血が繋がっていないからと、明子さんになんて言われたからだとしても…それだけは許せません」
「………」
「それでも、父は、父です。一度春河家に戻り話をしてきます」
「もちろん、それは君が決めることだ」
「安芸は、決して…傷つけないように話してきます」
「近いうちにわかることだ。それも君にまかせる。安芸は、守る…安心してくれていい」
「…それでも、母はなんと言うかわかりませんから」
自分の母親の気性をわかっているのか、遙は言葉を濁した。