桃橙 【完】
帰り道、タクシーの中で遙はひどく困惑していた。


…安芸が本当の妹じゃない?


安芸は、青柳社長の娘で…


安芸は…


安芸が…



俺達は、兄弟じゃない…。


遙は、そこまで考えては、何度もかぶりを振った。


安芸が愛しかった。


とても可愛らしくて、なんでもしてやりたかった。


俺の手で…安芸を幸せにしてやりたいと何度も願った…



まるで、それは最大の愛の告白じゃないか…。


今更になって、客観的に自分の気持ちを振り返ればそういうことだったのだと…遙は気付いてしまった。


俺は…


遙は深くタクシーの座席に腰掛けて、流れる景色を眺めた。



……安芸…



俺は―…


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