桃橙 【完】
嫉妬の炎
――…
青柳本家の日中はとても暖かな日差しの入る南側の部屋が安芸の部屋だった。
その部屋で、毎日のように時間があけば総は安芸に会いに青柳家を訪れていた。
「安芸、婚約発表の時は着物でもいいかな」
「総さんも着物ですか?」
「いや、俺はスーツ」
「じゃあ、私も…」
「青柳社長が、着せてあげたい着物があるみたいだよ」
「…そうなんですね、なら」
「安芸…」
総と安芸は、半年後に迫った2人の婚約発表の詳細について話していた。
想像通り、…いや、想像以上に安芸との婚約はスムーズにかつ、喜ばれた。
「青柳」とまさか婚姻が結べるなどど思ってもいなかった自分の両親は大喜びだった。
確かに…宗元と青柳が血縁を結べば様々な有益が生まれることは誰にでも想像がつく。
……まさか、こんなにも簡単にことが運ぶとはな。
総は、安芸となんとしても自分の婚約者にしようと考えていた頃を思い出し、小さく笑った。
「…総さん?」
「ん?なんだ?」
安芸の部屋でソファーに座り安芸の髪を自分の指に絡めた。