桃橙 【完】
――…
「……な、なんということだ…」
お父様は目の前で頭を抱えていらっしゃった。
そしてお母さまは―…
顔面蒼白…その言葉がぴったりと当てはまる。
あれから数日後に遙お兄様は実家に行って話をすると、私に声をかけてくれた。
だから、私も連れて行って欲しいとお願いをしたのだった。
…想像通りに、両親は安芸の素性が意外だったみたいで…何の言葉も出てこない。
当たり前よ…私だって、驚いている。
そして―…
お父様は、わなわなと震えた唇でお兄様に話し始めた。
「は…遙…それで…青柳社長は…」
「青柳社長?話したとおりです。安芸のことを」
「そうじゃない!俺のことだ!俺のことを何か言っていなかったか?」
「…特には」
お父様の話が解せないのか、お兄様は眉間に皺を寄せている。