桃橙 【完】
「宗元さま、安芸さまは…安芸さまは、こちらにいらしていませんか?」


「安芸…?どうして、安芸がここに…」



総の言葉に蔵宇都は、スッと下がり総に土下座をして謝罪をした。



「申し訳ありません…っ、宗元さま…」



周りは一体何事かと声を潜める。


総は眉間に皺を寄せたまま、蔵宇都の手を引き立ち上がらせた。



「何があった。言え」


「安芸さまが…いなくなりました…」


「なんだと?」


「安芸さまは、本日、総さまをお見送りしたいと以前から仰っていました。…驚かせようと、お昼過ぎにこちらにつき、昼食を食べて…化粧室に行ったきり…」


「いなくなったというのか」



総の鋭い言葉に、蔵宇都は力なく頷いた。
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