桃橙 【完】
「蔵宇都、いなくなったのは化粧室で間違いないか」

「はい。土産を精算している間に…それに、このハンカチは化粧室の前に落ちてありました」

「……そうか、防犯カメラを調べてもらおう」

「そのようなことが」

「あぁ、すぐに調べさせる」


総の力強い瞳を見ていると、必ず安芸を助けられる、そんな希望が湧いてくる。

蔵宇都は、安芸の伴侶として、そして同じ男して…総のことを心底尊敬していたのだった。


すぐさま、空港の防犯カメラを調べ上げて、安芸が雅に連れ去られたことを知った総と蔵宇都はすぐさま青柳社長、春河へと連絡を取った。


「陶弥」


「…春河に連絡をしたところ、雅さんは今日、春河のいるフランスへと出国する予定だったらしい」


「…偶然か」


「多分な。…春河もこちらに向かうそうだ」


「何か心当たりは」


「……いや。ただ雅さんは車で安芸を連れて行ってる」


「あぁ…」


「レンタルでもしたのか?」


「いや…どうだろうな」


「この車は春河家のものです」


蔵宇都の言葉に、総と陶弥が視線を合わせる。
< 236 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop