桃橙 【完】
――…
「………」
感覚のなくなった腕をピクリと動かして、ゆっくりと瞼を開けた。
ザワザワと遠くから声が聞こえる。
「…ぉそ……、ぃ…」
雅は、握っていた安芸の手をゆっくりと離してポケットの中からライターを取り出した。
そして、最後の力を振り絞るように立ち上がり
大声を上げた。
その声に反応するように、明らかに近くに声が聞こえてくる。
そのことに安堵して、傍にあった木にライターで火をつけた。