桃橙 【完】
それぞれの想い
――…
「総さま」
「…なんだ、松田」
「顔色が優れませんが」
「うるさい。黙れ」
俺は、窓の外を見つめた。
いつも見つめる景色のどこかに安芸がいるんじゃないかと、思わず視線を彷徨わせてしまう。
…もう3ヶ月になる。
安芸がいなくなってから。
一体どこへ消えたのか…
春河家を探ってみても、春河家さえも安芸の行方を知らなかった。
この3ヶ月、一度たりとも安芸のことを忘れたことなどない。
俺は、グッと拳を握り締めた。
「総さま、こちらのデパートです」
「あぁ…」
今回の仕事に俺は集中しようと頭を切り替えた。
親父に納得させるためにも、安芸を見つけるためにも、仕事だけは手を抜けなかった。