桃橙 【完】
入った店は、時間が早かったこともあり、静かに食事を進めることができた。


簡易な仕切りのある個室で、俺は思いのほか美味しそうに食事を勧める彼女を見つめた。



「美味しそうに食べるね」


「え…?そうですか?」


「うん」


「…久しぶりにこんなに綺麗な食事を頂いたから…」


「そうなんだ」



彼女を見れば何か訳ありなのはわかっていた。


深く追求するつもりもなかった。


なぜなら…


ゆっくりと時間をかけて彼女を付き合って行きたいと思っていたから。


ゆっくり、彼女の心を紐解いていきたい…。


俺は、いつのまにかそう思い始めていた。
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