桃橙 【完】
「俺の名前、教えてなかったよね」


「…そうですね」



今、気がついたといわんばかりに、安芸は小さく微笑んだ。



「青柳 陶弥、陶弥でいいよ」


「とうや?」


「そう、僕は安芸ちゃんって呼んでもいい?」


「え、はい…」


「ん、これもおいしい。ほら、食べなよ」


「ありがとうございます」



掠めて触れた指の体温でさえ愛しくて、そのまま抱きしめたくなる。


これは…どういう感情なんだろう。


安芸と食事を勧めていくと、途中で俺の携帯がなった。


安芸に電話をしてくると言い残して、俺は店の外へ出た。
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