静かな涙【完】
『ただいまー。』


玄関を見るとやはり見慣れた靴がある。

式に向けて準備しているのかな‥

誰からも帰って来ない返事。

皆、忙しそうだ…


リビングへ顔を出す。
コーヒーのいい香りがする‥


『‥ただいま…』


『あら、お帰り。真弓』
お母さんが洗い物をしながら言った。


『お帰り。お母さん、結婚式の招待状のリスト上げておいてね。』
お姉ちゃんがソファーに座ってあれこれと支持している。


『はいはい。せっかちね‥真紀子は。』



『浩ちゃんもよ。のんびりしてたらあっという間に時間なんて
過ぎちゃうんだからね!』


「………。」



『浩ちゃん…?』



「あ…何?…うん。解った。」



浩二さんと目が合った。


『ああ、なんだか忙しそうだし、私2階上がるね』
私はリビングを出ようとする。



『あ、真弓、私達の式出てくれるよね?』



『…あ、えっと…。』
どう言おうか悩んでいたら


『あら、真弓まだ言ってなかったの?真弓ね、留学するのよ。』
とお母さんが言った。
まだ言わないで欲しかったのに…空気の読めないお母さんめ…


お姉ちゃんと浩二さんが驚いている…


『そっ、そうなんだ…もうだいぶ前から決めてて…』
私は引きつり笑いをする‥


『いつ行くの?』

とお姉ちゃんが聞いてきた。



『…んと3月20日に出発しようと思って…』


『3月20日って…私たち19日に出発して
20日にハワイで式挙げるのよ?』


『う、うん…』


『わざとなの?わざとそんな日程立てたわけ?』

お姉ちゃんが睨みつける…



『違うの…向こうのガイドさんの都合がつかなくて…。その代わりに
19日空港まで見送るよ!だからごめん…』



私は頭を下げた。



『じゃあ…』と言って2階へ上がる。


部屋に着いて大きくため息を付いた。

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