静かな涙【完】
「…じゃあ…真弓ちゃん…ありがとね。またね…」




そう言って、浩司はお姉ちゃんを乗せた車椅子を押して、
私の横をすり抜け、病室を出て行った…




『………』




私は振り返る…




浩司の後ろ姿が見える…



浩司の…




笑顔を思い出す…



今は…



私に向けられてはいないんだ…



その笑顔は…



お姉ちゃんに傾けられている…




私は何も言えないし…


何もしてあげられない…



お姉ちゃんにも…




浩司にも…




 
私は…



真っ白な頭の中で…






部屋を後にした…

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